ESとはEmployee Satisfaction(従業員満足)で、CSはCustomer Satisfaction(顧客満足)の略です。
「顧客満足」という言葉はいろんなところでよく聞くと思います。リッツカールトンなんかがよく例で使われるアレです。
今までいろいろな客商売に携わってきましたが、上司から言われるのはいつもCS (顧客満足) のことのみ。
若い頃は素直に聞いていたけど、だんだん疑問に思うようになってきました。
「CS向上委員会」とかよく聞くけど、本当に意味あるのかな?と。
ここまで読んでいただければ、だいたい私の言いたいことはわかっていただけたかと思いますが、世の中の経営者、管理職たちはCS (顧客満足) のことだけ言いすぎる。
もちろんそうじゃない会社もたくさんあると思いますが、残念ながら私がいままで所属してきた会社は、いずれもES (従業員満足) にはあまりふれず、CS (顧客満足) のことばかり声高に叫んでいました。
ESとCSはクルマの両輪
私が思うにCS(顧客満足)とES(従業員満足)はクルマの両輪。両方がそろってはじめて機能するというもの。
つまり、CS(顧客満足)だけどんなに全社で取り組んでも片手落ちなのです。
逆にES(従業員満足)にとにかく注力する会社があったとしたらどうでしょう。
全社を挙げてES(従業員満足)に取り組む、経営者も管理職もESのことしか口にしない、CS(顧客満足)については一切ふれない。
もし、このような状況になったら従業員はどういう行動をとるでしょうか?
ES(従業員満足)の程度にもよるでしょうが、少なくとも“満足”となっているわけだから従業員が“不満”を抱えたままお客様と接することはない、ということになります。
まぁ、人間の満足なんてキリがないから、従業員を満足させるために、ありとあらゆることをやっていたらすぐに会社は潰れてしまうでしょう。
完全に“満足”という状態は無理だとしても、少なくとも従業員側は会社側がES(従業員満足)のためにいろいろやってくれている、ということは感じるはずです。
ES (従業員満足) については一切ふれず、CS (顧客満足) のことばかり言う会社と、
CS (顧客満足) については一切ふれず、ES (従業員満足) のことばかり言う会社
あなたはどっちの会社で働きたいですか?
CS (顧客満足) をどんなに高めてもES (従業員満足) は高まりません(むしろ疲弊していく場合が多い)。
しかし、ES (従業員満足) が高まれば自然とCS (顧客満足) は高まっていくというのは想像しやすいと思います。
衣食足りて礼節を知る
衣服や食糧といった生きるために必要なものが十分にあるようになって初めて、礼儀や節度といった、社会の秩序を保つための作法・行動を期待することができるようになるものである。
ウィクショナリー (Wiktionary)
自分の生活がどうなるかわからないという状態で、すばらしい接客など期待できるはずがありません。
仮にちゃんと給料が毎月安定的に出ていたとしても、同業他社に比べあまりにも少なかったり、何年も昇給しなかったりしていたら従業員のモチベーションはあがりません。
類義語にこういう言葉もあります、
「貧すれば鈍する」
貧乏をすると、毎日その生活のことばかり考えるようになるから、人は知恵や頭の回転が衰えてしまい、賢い人でも愚かになるという意味。
故事ことわざ辞典
また、暮しが貧しくなれば、心までも貧しくなるものだということ。
ちなみに、“衣食足りて礼節を知る”の対義句は“ 武士は食わねど高楊枝 ”らしいです。
「 武士は食わねど高楊枝 」
武士は食わねど高楊枝とは、たとえ貧しい境遇にあっても、貧しさを表に出さず気位を高く持って生きるべきだということ。また、やせ我慢することのたとえ。
故事ことわざ辞典
なるほど。
経営者はそれでいいでしょう。 “ 武士は食わねど高楊枝 ” でいいんです。
でも、従業員にそれを強いてはいけないと思います。
以前、従業員に “武士は食わねど高楊枝” の美学を延々と語る経営者の下で働いていました。
いま思えば地獄ですね。
仮に同業他社並みの待遇だとしても、それですべて解決ではありません。
経営者や上司に対して、従業員が不信感を抱いていた場合CS (顧客満足)どころではありません。
人間的に信頼出来なかったり、信用出来なかったり、搾取されているなと感じた場合、従業員は転職や独立を考えているかもしれません。
これまで散々経営者や上司を責めてきましたが、経営者の方々も従業員を大切に思っていないわけではないと思います。むしろ、従業員を幸せにするために、たくさんの給料を払うために心を鬼にして売上UPだ!顧客満足度UPだ!と叫んでいるのかもしれません。
でも、やはり順序が違います。
“ 衣食足りて ” → “ 礼節を知る ” のであって、従業員が満たされていない状態でCS (顧客満足)は望めないと思います。
私は経営者をやったことはありませんので、すべて机上の空論かもしれません。
もし、自分がそういう立場になった時は「ESなくしてCSなし」を実践してみたいと思います。
今回はこの辺で。
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