ビジネスの基本と言われる「報・連・相(ほうれんそう)」
「報告」「連絡」「相談」が仕事をスムーズに進める上で重要であることに疑いの余地はありません。
新社会人が一番最初に教わることかもしれません。
それぐらい大事な「報・連・相」ですが、決して上司が口に出してはいけません。
社長はもちろん、部長やリーダーなど、部下が1人でもいる人は必ず意識した方がいいと思います。
上司が部下に「報・連・相(ほうれんそう)しろ!」と言ったら負け
なぜ【上司が部下に「報・連・相(ほうれんそう)しろ!」と言ったら負け】なのか?
「報・連・相」というワードが会社内で使われるシチュエーションを考えてみましょう。
【ケース1】:新入社員が研修などで「上司への「報告」「連絡」「相談」は大事なので必ず行うように」と教わる時。
【ケース2】:なにかトラブルが起き、上司が部下に対して「報連相はどうなってんだ!」「報連相をちゃんとやれ!」と怒鳴る時。
代表的なところではこの2パターンだと思います。
【ケース1】の場合は仕方がありませんね、新入社員が初めて教わる言葉ですから。
上司や先輩がこの言葉を言うのは、この時を最初で最後にしたいものです。
問題なのは【ケース2】です。こちらを掘り下げてみたいと思います。
「報・連・相」は当たり前
「報・連・相」は出来て当たり前のことなんです。
ですから、「報連相どうなってるんだ!」と部下に対して言った時点で上司であるあなたの負けなのです。
なぜなら、自然と部下がなんでも報告や相談をしてくるような話しかけやすい雰囲気を作れなかったわけですから。
あなたは部下との間に距離があり、壁があり、深い溝があります。
誰もあなたにホウレンソウしてくれないんだから、あなたは部下から信用も信頼も尊敬もされていないということになります。
あなたが「ホウレンソウどうなってるんだ!」と叫んだ時点で、
「私は部下から信用も信頼も尊敬もされていないダメな上司です。マネジメント能力もリーダーの素質もないダメダメなポンコツ上司なんです!」
と自ら周囲に公言しているようなものです。
恥ずかしくないのでしょうか?
だから上司が部下に向かって「ホウレンソウどうなってるんだ!」と言ったら負けなんです。
会社組織の中で、部下が上司に報告も連絡も相談もせずに物事が進んでいくということは基本的にはあり得ません。
報告も連絡も相談もせずに物事が進むならその上司は必要ありません。
なにもトラブルがなかったとしても、最低限「終わりました」という報告はあるはずです。
通常の組織であれば、必ず「報・連・相」を何度も繰り返しながら物事が進んでいくはずです。
それなのに【ケース2】では「報・連・相」が行われていなかったがためにトラブルが起き、また、その被害が大きくなってしまったと考えられます。
では、悪いのは上司だけなのでしょうか?
基本中の基本である「報・連・相」を行わなかった部下の方に非は無かったのでしょうか?
悪いのは上司
私の答えとしては、【ケース2】で悪いのは間違いなく上司の方ということになります。
トラブルが起きるまでに「報・連・相」をしなかった部下の方が悪いのでは?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは確かにそうで、まったく悪くないとは言えません。
ですが、
あえて言いますが、私は上司に問題があると思っています。
新入社員研修でも教わり、社会人1年生のための本にも必ず書いてあり、入社1年目なら何度か言われていたかもしれません。「報告」「連絡」「相談」が大事なことを知らないはずがありません。
なかには「報・連・相」を欠かさずしっかり行っている人もいるのは確かです。
社会人なら誰でも必ず知っていて、その重要性も理解しているはずなのに、行動に移せなかったのにはなにか必ず理由があるはずです。
どうして上司に対して「報・連・相」が行われなかったのか、、、
一言でいえば、「話しずらい上司」だからです。
「話しずらいから報告や連絡をしなかったなんて、そんなの甘えだ!」という声が聞こえてきそうですが、私のサラリーマンとしての長い経験上、また数回転職をしていろいろな会社を内側から見てきた経験上、“話しずらい上司”、言い換えれば、“恐い上司”には報告も連絡も遅れがちになります。まして相談なんて絶対しないと思います。
これを“部下の甘え”と言ってしまってはなにも解決しません。
きっとまた同様の「報・連・相」の遅れが繰り返されると思います。
なぜなら、恐いものは恐いからです。
恐い上司に対して、迅速にトラブルを報告できる部下はそういません。
頭では早く報告した方が良いということはわかっていても、身体が動きません。
一般的な社員はそういう人が多いと思います。私もかつてはそうでした。
恐いから報告が遅れ、そうすると今度は報告が遅れたことに対してまた怒られて、
「報・連・相はどうなってんだぁ~っ!報・連・相も出来ないのかぁ~っ!社会人1年目だって知ってるぞぉ~っ!1年目からやり直せぇ~っ!」と負の連鎖になるわけです。
こんなすぐ怒る人に誰も迅速に報告も連絡も相談もしません。
それでも、「会社から給料もらってんだから上司に逐一報告することは義務。部下の怠慢でしかない」とおっしゃりたい気持ちはよ~くわかります。
ですが、人間は感情で動く生き物です。理屈でいくら理解していても身体が動かない時があります。
私はこれまで、社長をはじめ、ヒトの上に立つ人はすぐ怒ったり怒鳴ったり感情的になってはいけないと何度か書いてきました。その中に、ある医療従事者への調査について書いたことがありました。
その調査とは、
ある8つの看護師チームを対象に、主任看護師や同僚との関係が良好なチームとそうでないチームで薬物投与ミスにどのような影響がでるかを調べたそうです。
調査に関わった誰もが、優秀な主任と協力的な同僚に支えられている看護師のチームの方がミスは少ないだろうと思っていました。しかし、結果はその逆でした。なんと、一番有能な主任が指揮しているチームは、最低な主任が指揮しているチームの10倍もミスが多かったそうです。
どうしてこんな結果になってしまったのでしょう?
この調査結果を詳しく調べたところその理由が判明しました。
優秀な主任が指揮しているチームの看護師たちは、自分のミスを認めても“安全”だと感じていたため、ちゃんとミスを報告していた。一方、最低な主任が指揮しているチームには“恐怖”がはびこっていて、看護師たちはミスを犯そうものならクビになる、裁判にかけられる、役立たずのレッテルを貼られると恐れ、ミスをほとんど報告していなかったそうです。
(ロバート・サットン著「あなたの職場のイヤな奴」より)
このエピソードは怒る上司や高圧的な態度をとる上司がいかに有害かを教えてくれます。
もしミスが起きてしまったらそれは絶対に報告されなければいけない医療現場でさえ、このありさまです。
普通の職場でしたら不都合なことはほぼ100パーセント上司には報告されないでしょう。
すぐ怒る、すぐ怒鳴る上司に対して誰も、報告も連絡も相談もしないでしょう。
そういう上司に限って「報・連・相が大事だ!」「なんで誰も報告しなかったんだぁ!」とわめき散らすのを、これまで何度も見てきました。
人間は理性ではなく感情で動く生き物です。
わざわざ怒鳴られるために行動する人は、まずいないと考えるべきです。
まさにこんな上司は“百害あって一利なし”です。
ではどうすれば「報・連・相」が機能するようになるのでしょうか。
「報・連・相」しやすい環境をつくる
どうすれば「報・連・相」が機能するようになるかは、2つ方法があると思っていて、1つ目はこの
「報・連・相しやすい環境をつくる」
ということだと思います。
日頃から上司と部下の間に話しやすい雰囲気を作っておく。
これはなにも「なぁなぁの関係になれ」とか、「必要以上に仲良くしろ」ということではありません。
上司と部下の間に適切な緊張感は保ちつつ、フランクに話せる関係も普段から意識して構築していかなければいけないと思います。
「報・連・相」を英語でいうと、
「報告(Report)」「連絡(Communicate)」「相談(Discuss)」
となるそうです。部下とコミュニケーションとれてますか?部下とディスカッションしていますか?
【「報・連・相」しやすい環境をつくる】の主体は上司です。部下ではありません。
部下がいくら努力してもどうしようもないことです。
上司の方が意識してそういう環境を作ろうとしない限り、そうはなりません。
自然とそういう関係が築ければ一番いいのは言うまでもありませんが。
でも、なかなか部下と距離感を縮められない上司もいると思います。
そういうかわいそうな上司のためには2つ目の方法です↓
自動的に「報・連・相」が行われるシステムを作る
人間が努力してもうまくいかないのなら、人間の意志とは関係なく自動的に「報・連・相」が行われるシステムを作ることです。
例えば、毎日の朝礼なり夕礼なりで進捗を報告する時間を取るようにする(もちろん形骸化しないよう工夫が必要ですが)とか、仕事上のメールは必ず上司もCCに入れるようにする(手動じゃなくて強制的にCCやBCCがつく仕組み)とか、月に一度はフランクに話せる場を設ける(決して飲み会とかではありません。就業時間内に社内とか喫茶店とかで)とか、やり方はいろいろあると思います。
でもここで大事なのは、やはり上司が感情的に怒ったりしないことや、なにをしゃべっても大丈夫という安心感がないと不都合な事実は闇に葬られようとしてしまいます。
やはり、上司が怒るとか高圧的な態度をとることは「百害あって一利なし」なので、徹底的に排除しなければいけません。
ここで必殺のフレーズをご紹介して終わりにしたいと思います。
部下と話す際に上司であるあなたはこう切り出しましょう、
「なにかトラブルは無い?無いわけないでしょう。トラブルはあって当たり前なんだから。なにも問題が無いという方がおかしいよ。ちょっとしたトラブルでもいいからなんかない?トラブルが無いと私の仕事がなくなってしまう。トラブルを解決するのが上司である私の仕事なんだから。だから、なにかあったらすぐに話してね」
どうでしょうか?もし上司にこう切り出されたらなにかしら話してくれるんじゃないでしょうか。
それで本当にトラブルを話し出しても、上司であるあなたは決して豹変して怒り出してはいきません。
「なるほど、それは大変だ。すぐに手を打たないと。これを解決できるのは〇〇部長と〇〇課長だ、すぐに情報を共有して力を貸してもらおう。みんなで知恵を出し合えば解決できるよ!このタイミングで話してくれてありがとう、もうちょっと遅かったら手遅れになっていたかも知れないけど今ならまだ大丈夫。十分挽回できるよ!」
こんなことを言ってくれる上司の下で働きたいものです。
少なくとも自分の部下に対しては、普段からなんでもしゃべりやすい雰囲気になるようにしたいと思います。
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