ダッチオーブンやスキレットなどのキャストアイアン(鋳鉄)製品を使っている人の間で必ず話題になるテーマが『シーズニング』です。
『シーズニング』について多くのダッチオーブン/スキレット愛好家がブログやYoutubeなどで情報発信しているので、シーズニングのやり方については簡単に調べることができます。
なのでここでは『シーズニング』の具体的なやり方などにはふれず、『シーズニング』に使用する油に焦点をしぼってお話したいと思います。
結論:シーズニングに適した油は『大豆油』
多くの方がシーズニングにはオリーブオイルを使われているのではないでしょうか?
私自身も以前、オリーブオイルを使ってダッチオーブンのシーズニングをしている動画をYoutubeに投稿しました。
この動画ではエキストラバージンオリーブオイルをたくさん使い、大事なダッチオーブンのためにすごく贅沢なシーズニングを行ったつもりでした。
ところが、この動画を見た視聴者の方から、
「EXVオリーブオイルはただのジュースなので不純物が多くむしろ臭いの原因となる」
という旨のコメントをいただきました。
エキストラバージンオリーブオイルをふんだんに使ったシーズニングは、実はただの自己満足で、シーズニング的には不適切だったみたいなのです。
ここから私の『シーズニング研究』が始まりました。
「シーズニングはオリーブオイルでやるもの、その中でも高級なEXVオリーブオイルを使っているのだから悪いわけがない」と思い込んでいた私には青天の霹靂ともいえるコメントでしたので、本当?という思いもあり、俄然研究意欲が湧くのでした。
「シーズニング」=「オリーブオイル」という都市伝説
シーズニングに使用する油について調べているうちにすぐに色々なことがわかってきました。
まず気になったのは、やはり「オリーブオイルでシーズニングしましょう」と説明されているところがとても多いということ。
ただ、「シーズニングにはオリーブオイルを使いましょう」といいつつも、【なぜオリーブオイルなのか?】ということについて言及している説明は私が見る限り見つけられませんでした。
ほぼ盲目的に「オリーブオイルを塗って・・・」という説明があるだけで、たくさんある食用油の中で【なぜオリーブオイルなのか?】という私の疑問は払しょくされませんでした。
さらに調査を続けると、「オリーブオイルはシーズニングに適さない」というご意見をいくつか見つけることができました。
正確にいうと、「オリーブオイルは被膜を作りにくい」ということのようです。
調べを進めると油の重合化の話やヨウ素価の話など、普段聞きなれない単語がたくさん出てきて、理系じゃない私にはなんとなくしか理解できませんでした。
なんとなくしか理解していない私が四酸化三鉄のことや炭素の二重結合のことを書いても全然説得力がありませんので、詳しくはちゃんと説明してくれている他のサイトにゆずるとして、それらを私なりに咀嚼した結果、一つの結論に達しましたのでお伝えしたいと思います。
答えはすぐ近くに
被膜を作るという目的のために、わざわざ被膜を作りにくいオリーブオイルをあえて選ぶ理由はありません。
理系じゃない私でもそれぐらいのことはわかります。
では、オリーブオイル以外にもたくさんある食用油(サラダ油・ごま油・亜麻仁油・紅花油・米油・大豆油・コーン油etc.)の中から何を選べば良いのでしょうか?
LODGE社のウェブサイトには以下のように書かれています。

LODGE社の製品はあらかじめ工場でシーズニングを済ませてから出荷しているので、購入後にシーズニングをしなくても、洗ってすぐに使えるのがウリのひとつではあるのですが、ここで注目したいのはLODGE社がシーズニングに使用している油が記載されている、ということです。その油とは、そうです↓
【大豆油】
私の結論としては、あまり難しいことは考えず、製造メーカーがシーズニングに使用している油を使うのが間違いがなく確実なのではないか、ということです。
ちなみにシーズニングについてはLODGE社のウェブサイトに詳しく書かれていますので、こちらも併せて読んでいただくとより理解が深まるかもしれません。(英語のサイトですが、ブラウザの翻訳機能でなんとか読めました)

まぁ、これだけだとあまりに他力本願な感じなので、一応今まで調べた結果と照らし合わせたいと思います。
乾性油と不乾性油のあいだで
LODGE社がシーズニングに大豆油を使っていることがわかったところで、その裏取りをしていきたいと思います。
調べている中で「乾性油」「半乾性油」「不乾性油」という単語が出てきました。
代表的な食用油ですと↓
乾性油(ヨウ素価130以上)・・・亜麻仁油、紅花油、えごま油、グレープシードオイルなど
半乾性油(ヨウ素価100~130)・・・ごま油、コーン油、大豆油など
不乾性油(ヨウ素価100以下)・・・オリーブオイル、パーム油、なたね油など
サイトによって多少数値の違いがあり、大豆油が乾性油に分類されていたりするところもありましたが、いずれにしてもヨウ素価が比較的高い(120以上?)乾性油~半乾性油がシーズニングには適しているようです。
では、ヨウ素価が高いとなにがいいのでしょうか?
オリーブオイルなどのヨウ素価の低い不乾性油は、その名の通り乾かないので空気中でもずっとベタベタした液状のままです。固まらないのでポリマーの被膜もほぼ形成されません。
ダッチオーブンやスキレットに塗っても乾くことはなく、数日後に触っても手に油がついてきます。
反対に乾性油は薄膜にして空気中に放置すると比較的短時間に固化乾燥するそうです。
油が塗ってあるのにベタベタしないというのも、なんとなくイメージがわきずらいですね。
実体験としては、先日LODGEのスキレットを買ったのですが、黒光りしてましたが触っても手に油は付きませんでした。油が乾くとはこういう状態なのかと思いました。

あと、油絵なんかも乾性油が使われているそうで、乾いて固まるというのもなんとなくわかります。
簡単にいうと、ヨウ素価が高いものは空気中の酸素と結合して重合体(ポリマー)になり被膜を形成するので、その値が高いものほど硬い被膜になるということのようです(全然簡単にいえない・・・)
ヨウ素価は高ければ高いほど良いのか?
ではヨウ素価が高ければ高いほど良いのでしょうか?
ヨウ素価の高い油だと「えごま油」や「亜麻仁油」などがあるのですが、LODGE社はなぜそれらを使っていないのでしょうか?
ヨウ素価が高ければ高いほど硬い被膜が形成され、シーズニング的には良いような気がしますが、そうでもないようです。
どんなものでもそうですが、とても硬いものは柔軟性がなくなってしまうので、何かの拍子に簡単にひび割れたりします。コンクリートなどがそうでしょうか。
この例えが適切かはわかりませんが、古い油絵がひびだらけなのもこういった理由なのではないでしょうか。
ダッチオーブンやスキレットの場合、当たり前ですが加熱されたり冷ましたりを繰り返すわけで、当然金属ですから加熱により膨張したり冷めることで収縮したりを繰り返すことになります。その膨張や収縮に全体を覆っている硬い被膜が耐えられるか?ということになるかと思います。
シーズニングに「亜麻仁油」を薦める記事なども見かけたりしますが、逆に硬すぎてはがれるという記事も見かけます。
これらのことから推察するに、ヨウ素価が乾性油と半乾性油の中間ぐらいの大豆油が、ある程度硬い被膜を作りつつも柔軟性もある、ということで採用されたのではないかと考えられます。
もちろん、コスト的な理由もあるかもしれません。「亜麻仁油」は非常に高価ですし、大豆油はリーズナブルです。
ということで、ここまで個人的な見解を書いてきましたが、いかがでしょうか?
もし、真実をご存知の方がいらっしゃったら教えていただければと思います。
ではなぜ、LODGE社が大豆油を使っていると公式に書いてありながら、ここまでシーズニングにオリーブオイルを使うことが定説になってしまったのでしょうか?
個人的な感想としては、オリーブオイル万能説が(特に日本人には?)染み込んでいるので、なんでもかんでもオリーブオイルがいいっていう感じでオリーブオイルが広まったような気がします。
美味しいですし、健康にもいいですし、お肌にもいいし、いいことずくめに感じますね。
でもシーズニングという化学とはどうやら関係ないようです。むしろEVOだとニオイがついて逆効果だなんて、、、
「食塩が入っていない油を、、、」なんて説明もよく見ますが、食塩が入っていない油なんてオリーブオイルだけじゃないですし、、、ホント謎が深まります。
こちらも、もし真実をご存知の方がいらっしゃったら教えていただければと思います。
そんな私もこれまでの数年間、ずっとエキストラバージンオリーブオイルでシーズニングや毎回のお手入れをやっていました。
ネットの情報を簡単に鵜呑みにするのは危険なんだなと改めて思い知らされるのでした。。。
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